「教団X」で知られる芥川賞作家・中村文則氏の小説を映画化した『去年の冬、きみと別れ』は、婚約者との結婚を間近に控えた新進気鋭の記者・耶雲が、“女性焼死事件”と“事件の元容疑者の天才カメラマンに目を付け追いかけるうちに、いつの間にか抜けることのできない罠に迷い込んでしまう模様を描く”予測不能!サスペンス”

本作でストイックな記者・耶雲恭介を熱演したのがEXILE/三代目 J Soul Brothersの岩田剛典。これまでの爽やかなイメージを封印し、新たな一面を見せた岩田に、本作への思いを聞いてきた。




■「追いつめられて、監督が夢に出てきました(笑)」


ーー映画を拝見しまして、衝撃の展開に何度も驚かされました。演じるのがとても難しかったと思うのですが、オファーを受けた時のお気持ちから教えてください。

岩田:とても面白い脚本で、こんな重要な役を自分がいただけることをありがたく思いました。普段の僕や、アーティストとして活動しているイメージとはかけ離れている役柄を僕に委ねようと、僕のことを役者として見てくださってることがありがたいなと。期待に応えたいなと思いましたし、この役柄を演じることで大きく成長出来るだろうと感じました。



ーー台本を読んでどんな部分が面白いと感じましたか?

岩田:徐々に謎が解き明かされていくところにエンターテイメント性の高さを感じますし、映画でしか表現できないストーリーだと思います。瀧本監督には、これだけ緻密な脚本を2時間弱の映像でまとめていらっしゃることで、驚かされました。

©2018映画「去年の冬、きみと別れ」製作委員会

ーー岩田さん演じる耶雲は熱血でありながら、物語が進むにしたがって闇を抱えていく非常に難しい役柄だったと思います。すぐに役に入り込めましたか?

岩田:ありがたいことに、時系列に沿って撮影が進んでいったので、実際に演じるときも過去の出来事を思い出しながら、気持ちを込めることができたのでやりやすかったです。でもこういう役柄なので、撮影中は、プライベートの時間も自然と役柄に引きずられていました。人に会わないし、お酒も飲まないし、自然と家にいるようにしていました。その時は、あえてしていたつもりはなかったんですけど、今思うと役作りの為に自然にしていたんだなって。


ーーなるほど。

岩田:昔からそうなんですが、色々なことを同時にできないタイプなので、この撮影中は他の仕事を極力入れないでくださいとマネージャーにお願いしましたし、出来る限り作品に集中できるようにしました。アーティスト活動も控えさせていただき、どっぷり作品に浸かれました。



ーージャーナリストという役柄としての役作りはいかがでしたか?

岩田:こういう取材の時の皆さんの立ち振る舞いを参考にさせていただいて(笑)。とくに、北村一輝さん演じる編集長のところに原稿を持って直談判に行くところは難しかったです。微妙に違和感を残しつつ単純に好青年に見せなくてはいけない。その絶妙な空気感を出すのが難しくて、何度も何度も撮影しました。結果、これが使われるんだってテイクがOKになっていて驚きました(笑)。

©2018映画「去年の冬、きみと別れ」製作委員会

ーー監督の演技指導はかなり厳しいものだったようですね。


岩田:そうですね。色々言われたんですけど、ラストシーンは「このシーンで映画が終わるんだよ」と強く言われたり、無言の圧力をかけられていました(笑)。夢に監督が出てきたりして、めちゃくちゃ追い詰められていました。

 

 

ーー夢にまで…(笑)!

 

岩田:でも、現場ではとにかく監督についていきました。脚本も監督が入ってくださっていて、映画の全貌を把握しているのは監督だったので、僕は監督にすべてを委ねようと。撮影期間中ずっと監督の求める演技にいかに近づけるかということを頑張ってきたので、役者として本当に学ばせていただきました。今までのどの現場よりも「こういうシーンを撮りたい」と明確に言ってくださる方だったので、師匠のような存在でした。



ーーこの作品を通じて、特にどんなところが学びとなりましたか?

岩田:怒りを通り越した悲しみという表現を今までしたことがなかったので、とても重要な経験となりました。強い喜怒哀楽を全部やって、こういう出来事が実際に起きたら、自分もこんな激しい気持ちになるのだろうかと考えさせられた現場でした。

 


■共演者の印象は?「工さんは色気のある表情が魅力的」

 

©2018映画「去年の冬、きみと別れ」製作委員会

ーーラストにかけての役者さんたちとの演技合戦も見どころでした。

岩田:ラストシーンの良し悪しで、この作品が決まっちゃうと思っていたので、他のシーンももちろんですが、特に覚悟を決めて臨んだ撮影でした。最終日の二日間がこのシーンの撮影で、「こんなに大変なシーンを二日もやるのかよ」と思いましたが(笑)、実際の現場ではそういった邪念が出てくる隙もなく入り込めたので、手前味噌ですが、見ごたえのあるシーンに仕上がっていて安心しました。

 

 

ーー木原坂役の斎藤さんとの共演はいかがでしたか?

岩田:工さんは色気のある表情が魅力的なので、木原坂という役柄にピッタリだと思いました。でもいつもと目が全然違っていて、過去の出来事が自分の性格ににじみ出ているお芝居をされていたので、自分もそれに引っ張られる形で耶雲を演じることができました。



ーー婚約者の百合子を演じられた山本美月さんの印象はいかがでしょう?

岩田:イメージ通りで、裏表のない性格をされているなと思いました。天真爛漫でサバサバしていて、若いのに堂々としていて。昔からモデルなど色々な活動をされているので、それが経験値になっているのだなと感心しながらご一緒させていただきました。



■『去年の冬、きみと別れ』は驚きを感じられる名作

 


ーー岩田さんは映画好きとして知られていますが、『去年の冬、きみと別れ』のようなジャンルはお好きですか?

岩田:好きです。『ユージュアル・サスペクツ』や『クライム&ダイヤモンド』など、展開に引き込まれて最後に一気に結末に突き進む作品って、観ていてすっきりしますよね。あとは昨年の『メッセージ』も伏線が多くて、最後にしっかりオチがあり、気持ちの良い作品でした。


ーー本作をご覧になった皆さんも驚きの展開に翻弄されつつ、楽しんでくれると思います。

岩田:まだ自分は客観視できていなくて、観客の皆さんが罠にかかってくれるか不安な部分はあるのですが、関係者試写会で観た方が皆さん良かったよと言ってくださるので、きっとこの作品でも、そういった名作たちのような驚きを感じてくれるだろうと期待しています。



ーー本作は”予測不能!サスペンス”ですが、愛も一つの要素となっていると思います。ラブストーリーの岩田さんも、サスペンスの岩田さんもファンの方は楽しめますね。

岩田:そうですね。僕自身は恋愛の楽しいシーンは最初に全部撮り終わっちゃったので、最後は辛いシーンばかりでした(笑)。時系列通りの撮影だったので、最初は王道のラブストーリーものを撮っているような現場で、瀧本監督は「俺はこんなのやりたくない」って嫌がってましたけどね(笑)。

 

Photography=Mayuko Yamaguchi
Interview=Ameba

 

 

【作品情報】

 

 

<STORY>

彼女を奪われた。猟奇殺人事件の容疑者に――。 結婚を間近に控える記者、耶雲(岩田剛典)が「最後の冒険」としてスクープを狙うのは、猟奇殺人事件の容疑者である天才カメラマン、木原坂(斎藤 工)。世間を騒がせたその事件は、謎に満ちたまま事故扱いとされ迷宮入りとなっていたのだ。真相を暴くため取材にのめり込む耶雲。 そして、木原坂の次なるターゲットは愛する婚約者(山本美月)に――!木原坂の巧妙な罠にハマる婚約者、そして耶雲までも……。だがそれは、危険な罠の始まりに過ぎなかった――。 木原坂の本当の正体とは?耶雲の担当編集者(北村一輝)、木原坂の姉(浅見れいな)の秘密とは? 果たして、耶雲と婚約者の運命は!? すべての真実を目撃したとき、あなた自身が巨大な罠にハマっていることに気づく!予測不能!サスペンス、誕生!

 

 

映画『去年の冬、きみと別れ』は3月10日(土)より全国ロードショー。